“興奮神経”である交感神経と、“抑制神経”である副交感神経という、おのおの相反する作用をもつ神経からなり、各臓器、血管、皮膚などにめぐらされた神経ネットワークを形成している。
若い人が恋人の前にでると「胸が高鳴る」のは、交感神経が優位にはたらき、瞬間的に心拍数がふえ、血圧が上昇する現象である。
一方、ヨガや座禅で心をおだやかに保つと、抑制神経である副交感神経のはたらきが優位になり、心拍数も落ちつき、心臓も休まることになる。
こういった何らかのストレスの解消法を知らず、「競争心が強く、つねに時間に追われ、上昇志向の強い」人は、心臓病学的に。
タイプA”と分類され、心臓病や高血圧になる危険性が高いと言われている。
心臓は、一日に延べー万リットルもの血液を体のすみずみまで送りだす。
その力強い運動のためのエネルギー源として、ブドウ糖、脂肪、アミノ酸はもちろん、ほかの筋肉の運動によって生じた老廃物である乳酸でさえ、つかうことになる。
そして、このエネルギーの消費量は、血液および心臓自体の温度に大きく左右される。
心臓の温度が摂氏二〇度以下になれば、そのエネルギー消費は、通常の体温三七度の時の五%になると言われている。
心臓の手術は心臓の動きを止めておこなわれる場合がほとんどだが、そのとき四度に冷却した心停止液を用いるのも、また移植のために取り出した心臓を四〜一〇度の保存液中に浸しておくのも、すべて心臓の代謝を最小限にとどめ、手術後、あるいは移植後、すぐに心臓が拍動を再開できるだけのエネルギーを保存しておこうとの理由による。
また、先にシャント手術のところで動脈管について述べたが、これについても一言説明をしておこう。
母体内にいる胎児は肺呼吸をしていないため、胎盤を通して血液の酸素化をおこなっている。
胎児の心臓の右心室から送り出される血液の五分の四は、「肺を通過して左心房、左心室こという通常のコースをとらずに、肺動脈から動脈管をとおって下行大動脈に直接流れる仕組みになっている。
これは、胎児の肺の成熟が妊娠末期までかかり、胎児期の大部分を通じて肺の血管抵抗が高く、さらに肺胞が固く収縮してはたらかないことと関係している。
胎児の肺の成長に必要な酸素や栄養を送りとどけるには、全身に流れる血液の五分の一が肺を流れれば十分であり、それ以上の血液が流れることはかえって、未成熟な肺の負担になるだけだからだ。
母体の血液から胎盤を通して胎児に送られている血液中の酸素濃度は、成人が肺呼吸により血液に取り込んだ酸素濃度の二三〜二七%にすぎない。
こうした少ない酸素を確実に受け取るため、胎児のヘモグロビンは酸素をとくに捕捉しやすくなっている(胎児性ヘモグロビン)。
ところが、いったん出生して自立呼吸がはじまると、一気にこれまでの四倍の酸素を血液中に取り込むことになる。
ここで、臍帯(へそのお)が切断されて、胎盤とのつながりがなくなると同一時に、肺の血管抵抗は減少し、右心室から出た血液のほぼ全部が肺の中を流れることになる。
一方、動脈管は、高い酸素濃度の血液に反応して、数日から数週間で閉じてしまう。
もし、これが閉じなければ、血管抵抗の高い大動脈から血管抵抗の低い肺動脈へ多くの血液が流れ込み、左心房、左心室はそれに耐えられずに心不全におちいってしまうのだ。
成人の心臓病として、もっとも多いのは、「狭心症」と「心筋梗塞」、そしてマ心臓弁膜症」といった病気だ。
ゆきわたらない状況をさす。
「心筋梗塞」とは冠状動脈がつまってしまい、その血管の分布する範囲の心臓の筋肉が、壊死してしまう状況をいう。
先に述べたように、冠状動脈は大きく分けて、右・左前下行枝と左回旋枝の三本があるので、その一本に病変がある場合を一枝病変、二本、三本の場合は、それぞれ二枝、三枝病変という。
変形して肥厚し、血液の流れが悪くなったり(狭窄症)、弁がうまく閉じずに、血液が逆流する(閉鎖不全症)病態をいう。
狭心症や心筋梗塞が、いわゆる生活習慣に起因していることが多いのに対して、弁膜症の原因は、さまざまである。
日本では、リウマチ熱による炎症性のものが一番多かったのだが、これは最近では、減少傾向にある。
かわりに増えてきたのが、大動脈弁では老人性によるもので、米国ではこれがいちばん多く、日本もそれを追いかけるかたちになっている。
しかし、開発途上国では、今なおリウマチ熱による弁膜症が最も大きな問題である。
また僧帽弁では、狭窄症は依然としてリウマチ性のものが多いが、閉鎖不全症は、弁の粘液性変化や心筋虚血にともなうもの、また感染性心内膜炎によるものなど、多くの要因が考えられる。
頻度としては、大動脈弁、ついで僧帽弁におこることが最も多く、三尖弁におこることもまれにある。
三尖弁の弁膜症の原因として、最近米国で注目されているのが、ドラッグアビューズといって、いわゆる麻薬を静脈注射することによるもので、三尖弁だけに異常がある時は、麻薬の常用を疑ってかかる必要がある。
次に米国で典型的な、成人の心臓病患者を紹介しよう。
わたしは一九九四年七月から九八年一〇月まで、大学で働いていた。
この大学には、キャンパス内に四つの付属病院があるが、その一つに在郷軍人病院がある。
この病院は、アメリカ合衆国で兵役を務めたあとの退役軍人を対象とした病院で、費用はすべて国費でまかなわれている。
この病院では、年間二五〇例ほどの心臓手術がおこなわれているが、退役軍人が対象だということで男性患者が極端に多く、また自分で健康保険に入れない、経済的困窮者が多いことが特徴だ。
(国民皆保険の日本とちかって、アメリカでは、私的保険が中心となっている。
)一九九七年春、循環器内科から心臓外科へ紹介されてきた五五歳のA氏も、そういった典型的な退役軍人の一人だった。
かれはベトナム戦争従軍後、故郷のインディアナ中部の農村地帯にもどったが、なかなか定職につけず、酒浸りの生活がつづいた。
トムークルーズ主演の映画「七月四日に生まれて」にも描かれたが、従軍後の精神的トラウマが原因で、なかなか日常生活にもどれない人が今でも多いと聞く。
飲酒歴三〇年、喫煙歴四五年というA氏は、冠状動脈三枝病変に加え、糖尿病、高血圧を合併していた。
最初、心痛部(みぞおちのあたり)痛で、近くの内科を受診し、胃腸薬を処方されていたが、その後、痛みが左肩にひろがり、在郷軍人病院のERを受診した。
そして心電図検査の結果、狭心症と診断された。
最初の痛みが心痛部痛というまぎらわしいものであったことも問題だった。
はじめに受診した近くの内科では、本人に満足な健康保険かないため、まともな検査もうけさせてもらえず、在郷軍人病院に来てはじめて診断がついたのだった。
この人は検査の結果、大動脈弁狭窄症も合併していることがわかり、結局、大動脈弁置換術と、三枝バイパスをおこなった。
五五歳という年齢の患者には、通常、再度の弁置換を必要としない人工弁を用いる。
しかし人工弁を移植した場合、血栓予防のため、抗凝固剤(血液をかたまりにくくする薬)を飲みつづけ、その量も、定期的な検査をうけて調整しなくてはならない。
具体的にインプラントの何がお得かは、インプラントのユーザーのどんなメリットになり得るのかを明記したほうがいいでしょう。
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